ヒメカンスゲ(Carex conica)の種内異数性

 ヒメカンスゲは日本各地に広く分布する種であり、林縁や路傍に普通にみられる。岡本は西日本産のヒメカンスゲに多型がみられることを報告している。
 中国地方を中心にして78場所産320株について染色体数を算定したところ、2n=32,33,34,36,37,38の連続した種内異数体が観察された。また、2n=32,34,36,38の偶数の染色体数を持つ株ではすべて正常な2価染色体がみられ対合異常は観察されなかった。2n=33の株では1個の3価染色体と15個の2価染色体がみられた。3価染色体は大型、中型、小型の染色体が対合したヘテロ対合をしていた。このことから、2n=33の異数体は2n=32から染色体の切断か、2n=34の株からの染色体の融合により生じたものと推定される。2n=37に関しては減数分裂第T分裂中期で4価、3価、1価染色体がみられたことと、近縁であるカンスゲと外部形態が似ていることから雑種起源であると考えられる。
 日本におけるヒメカンスゲの種内異数体の分布はヒメスゲと同様に各異数体が広い分布域を持っていることが明らかになった。すなわち、2n=32の株は、中国地方の瀬戸内沿岸地域のみに分布していて、2n=36は、中国地方、九州地方の山地に広く分布していることがわかった。また、2n=34は近畿地方から中部地方に生育していた。また雄花頴、雌花頴、果胞の形態が各異数体間で異なっていた。
 これらヒメスゲとヒメカンスゲにおいては、同一集団では異なった染色体数はほとんど観察されず、それぞれの異数体が広い分布域を持つものと推定される。


ヒメカンスゲの体細胞分裂中期像.
A. 2n=32、B. 2n=33、C. 2n=34、D. 2n=36、E. 2n=37、F. 2n=38、
矢印は大型の染色体.  Bar = 5μm
2n=32、34、36、38の偶数の染色体数を持つ株は、すべて正常な2価染色体がみられ
対合異常は観察されなかった.



ヒメカンスゲ2n=33、37の減数分裂中期染色体像
2n=33では1個の3価染色体と15個の2価染色体がみられた。3価染色体は大型、中型、小型のヘテロ対合をしていた。
2n=37は減数分裂第T分裂中期で4価、3価、1価染色体がみられたことと、近縁であるカンスゲと外部形態が似ていることから雑種起源であると考えられる。
A. 2n=33=III+15II、B. 2n=37=17II+3I、C. 2n=37=III+15II+4I
D. 2n=37=2III+15II+I   u = univalent  t = trivalent
Bar = 5μm



ヒメカンスゲの種内異数体の分布
2n=32の株は、中国地方の瀬戸内沿岸地域のみに分布していて、2n=36は、中国地方、九州地方の山地に広く分布していることがわかった。また、2n=34は近畿地方から中部、東北地方に生育していた。
た。



               戻る