ヒメスゲ(Carex oxyandra)の種内異数性

 ヒメスゲは北は利尻島、礼文島から南は屋久島まで分布しており、高山または山麓の痩地に成育し火山灰土上に多くみられることが報告されている。ヒメスゲを本邦の35場所より採集し、342株について染色体の分析と外部形態の比較を行った。
 2n=18,20,24,26 の4種類の種内異数体が観察され、減数分裂では正常な2価染色体がみられた。また、これらの種内異数体株は北海道から東北、関東にかけて最も少ない染色体数 2n=18 をもつ株が分布しており、中部地方から近畿地方にかけて 2n=20 が、四国地方と九州地方に 2n=24 が分布していた。2n=26 の株は福岡県の英彦山のみでみられた。このように、ヒメスゲは日本において分布が南に移行するにしたがって、染色体数が2n=18から20,24,26と異数的に増加する傾向がみられた。
 ヒメスゲでは同一場所で異なった染色体数は観察されなかった。また各異数体間の染色体の大きさの比較により、染色体数が増加すると、大型の染色体が減少し、小型の染色体が増加する傾向がみられた。カヤツリグサ科植物はイグサ科植物と同様に動原体が染色体上に分散した非局在型動原体を有すると考えられ、染色体の断片化により、染色体数が異数的に増加したものと考えられる。
 また、各異数体間の葉型、雄花頴、雌花頴、果胞、痩果の形態には違いがほとんど認められなかったが、屋久島産の株は、他の異数体株に比べて葉と雄小穂が小型であり区別できた。屋久島産のヒメスゲを岡山理科大学の温室で数年間生育させてもこれらの形態に変化はみられなかった。このことから、屋久島産のヒメスゲは他の植物でも見られるような矮小化が生じたものと考えられる。


ヒメスゲの減数分裂中期像.
4種類の異数体は正常なII価染色体を形成し分裂異常は見られない。
A. 2n=9II、 B. 2n=10II、 C. 2n=12II、 D. 2n=13II  Bar = 7μm



ヒメスゲの種内異数体の分布図
北から南に向かって、染色体数が2n=18から20,24,26と異数的に増加する傾向が見られる。
   ●2n=18、○2n=20、○2n=24、◎2n=26



ヒメスゲの種内異数体の垂直分布
 北から南に移行するに従い染色体数は減少する。北海道では標高200m以下でも見られるが、本州、四国、九州地方では1000m以上の山地に多い。



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